クロッシング


下高井戸シネマにて鑑賞。
ネタバレを含むのでたたみます。
DVD化されても家で一人で見る事はないと思う。もし家で見たらあまりにも辛すぎて2時間弱が耐えられない気がする。
物語の主役となる北朝鮮に暮らす親子三人と犬一匹の家族。この家族構成が自分の育った家族構成と同じだった。つまり、どこの国にもいる普通の家族なんだよね。
次々と訪れる辛い出来事に、悲しい気持ちになると同時に、ヨンスもジュニも失敗すれば強制連行という常に命がけの場面が続くので、ドキドキ感が止まらない。緊張感だけのワクワクはしないスリル。終盤のジュニの脱北シーンは、なんとかしてお父さんに会わせてあげたいと願うばかり。
北朝鮮で自分の帰りを待っている妻の死を知ったヨンスが「神は南(韓国)にだけいるのか。豊かな国だけか。」という台詞がいちばん印象に残って、ものすごく辛かった。結核の妻のために薬を手に入れようと脱北したけど、韓国では結核の薬はタダでもらえる。薬が手に入らず死んでしまった妻。シーンをさかのぼれば、ヨンスの友人(ミソンの父親)は聖書を持っているのを見つかったことで連行されてしまうっていう伏線もあったんだよね。神様って何だろう。
北朝鮮が舞台のシーンは収容所は目を背けたくなるような悲惨さだれけど、日常生活の中でのサッカーの場面や、収容所の中でジュニとミソンが自転車の二人乗りをする場面など何気ない幸せも描かれている。ヨンスは騙されて韓国に亡命をしてしまい、その結果、裕福な生活も手に入れるけど、家族を失ってしまう。家族で幸せに暮らすためだけに脱北したのに。エンディングで、北朝鮮でサッカーの試合をした時のみんなが幸せそうに笑っていた場面がもう一度映し出されて、幸せって何なのかと考えさせられる。